緑島を探索
台東から三百km離れた海上に、緑に覆われた小さな島があり、人々はそこを緑島と呼んできました。けれども、緑島にはもう一つのユニークな名前があります。それは火焼島です。火焼島の名前の由来には諸説あります。夕陽が西に沈む頃、海面が反射した夕焼けでオレンジ色に染まり、燃えているように見えるからだという人がいます。かつて移住者が開墾に勤しんでいた頃、雷が島を直撃し火災が起きたからという説もあります。また、台風が去った後、雨にさらされてむき出しになった赤い泥層と真っ黒な火山岩層が並び、遠くから見ると、燃えているように見えたから、とも言われます。何れにしても、緑島の独特の地形が由来になっており、これら特徴は旅人が緑島を愛さずにはいられない理由に違いないのです!
台湾東南の隅.太平洋に浮かぶ小島
緑島は一艘の船のよう
月夜に揺れている
娘さんや
おまえも私の心の海でゆらゆら揺れている
私の歌声はあの微風とともに
おまえの部屋の窓のカーテンを揺らすだろう
『緑島小夜曲』潘英傑
『緑島小夜曲』でいう「緑島」は台湾本島のことで、現在の緑島ではありません。けれどもそのロマンチックな歌詞は、緑島に対する多くの人の第一印象となっています。台湾の東南にあり、台東からは船でおよそ50分。火山の噴火により形成された緑島は、紺碧の海に囲まれたダイビングパラダイスであり、台湾人にとって人気の旅行先でもあります。さまざまな顔を持つ緑島へ、自分だけの小夜曲を探しに行きましょう。
一年中夏.火焼島の無限の熱力
亜熱帯モンスーン気候帯に位置する緑島には、明確な四季の変化はなく、一年中ほとんどの時期が台湾の夏のようです。温暖で湿度は高いですが風が強く、年間で気温が低いのは1月から2月頃、高いのは7月から8月頃です。夏の観光シーズンは毎日強い太陽が照りつけますが、マリンスポーツを体験するには絶好の季節です!
初めての緑島.絶対に外せない5つ
緑島ではどのように過ごしたらいいでしょうか?緑島は大きくありませんが、小さいとも言えません。オートバイで島を巡れば、豊かな自然の生態を観察でき、白色テロの時代に政治犯を収容した過去に触れれば、歴史を味わう旅ができます。小さな離島の独特の暮らしも、一味違う日常体験をもたらしてくれます。これらが緑島を、台湾で旅人に最も愛される離島にしているのでしょう。緑島訪問が初めてなら、絶対に欠かせない5つのことから旅を始めましょう!
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ダイビング
緑島は海底火山の噴火で形成されたため、島にはたくさんの丘があり、周囲はさまざまな岸サンゴ礁が広がっています。温暖でクリーンな海は、世界一と言われるサンゴの群落を育んでおり、海外から多くのダイバーを惹きつけています。世界中のダイバーに愛される海中のパラダイスなのです。海に潜る勇気がなくても大丈夫。シュノーケリングで緑島の海の美しさを体験しましょう。インストラクターの指示に従い、海面に浮かびながら海中世界を眺めれば、忘れらない思い出が作れるでしょう。
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海底温泉
台湾にはたくさん温泉がありますが、緑島の朝日温泉は、世界で三ヶ所だけの海底温泉です。緑島の東南側にある朝日温泉は、海水のしょっぱさも加わった硫酸塩化物泉。東南方の露天にあるため、夜間は星空を見上げながら、早朝は水平線の彼方から上ってくる朝日を見ながらの温泉が楽しめます。ここにしかない世界レベルの景観です!
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牛頭山大草原
緑島の東北の角で緩やかな起伏をなす岬には、小さな丘があります。それは遠くから見ると、青い海に伏せている牛のよう。頭、鼻、耳もあり、誰もがクスッと笑ってしまうでしょう。ここが牛頭山大草原です。ここは日の出を待つのに絶好の地点でもあります。高台に登れば、朝日に包まれながら海を眺めることができます。
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「吃牢飯」
海に浮かぶ緑島は台湾本島とちょうど良い距離を隔てているため、島にはいくつかの刑務所が設置され、政治犯と刑罰が重い受刑者が収容されていました。かつては緑島へ行くと言うと、旅行ではなく、島で刑務所に収容される、「吃牢飯(監獄のメシを食べる)」、と言う意味だったのです。今ではすっかり観光地としてのイメージが定着した緑島では「吃牢飯」が観光の目玉となっています。監房をテーマとした内装で、「強煎(発音が「強姦」と同じ)飯」、「縦火(中国語で「放火」の意味)飯」などの料理を出すレストランもあります。
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新生訓導処
緑島の「新生訓導処」は学校の新入生を訓練し指導するところではありません。島にあった二ヶ所の政治犯収容所の内の一つです。かつての白色テロの時代、政治の話題はタブーでした。「新生訓導処」は政治的に迫害された人たちの収容所として、労働改造活動の他に、思想改造も行われていました。現在では観光用の展示がされているだけですが、中に足を踏み入れると、ゾッとするような雰囲気が伝わってきます。台湾の歷史に対する認識が深められる場所です。
珍しい美食.島上の唯一無二を食す
どんな場所にも風土や住民の暮らしに寄り添った特別な日常と食べ物があるものです。短い旅の間では、現地の生活習慣を完全に理解することはできないかもしれません。けれどもグルメレーダーを働かせれば、足元の土地を知ることができるでしょう。緑島も例外ではありません。暮らしに必要なものが十分に手に入らなかった離島にあって、緑島では本島とは違った美味が生み出されました。名前も見た目も馴染みがないものですが、旅人の好奇心を刺激する美味です。
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海草かき氷
台湾人は甘いスープが大好き。酷暑の夏に緑島を訪れたなら、甘いかき氷で暑さを吹き飛ばしましょう!黒糖かき氷、マンゴーかき氷は食べたことがあっても、海草かき氷はどうですか?普通のかき氷と同じように、仙草、キャッサバゼリー等の具が載っているかき氷ですが、さらに緑色の海草がトッピングされているのです。甘さの中に潮の香りが感じられ、夏にぴったりな海の味です!
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芡粿(餅米パンケーキ)
強風が吹きつける緑島では、農作物が育ちにくく、ピーナッツ、サツマイモなどのいくつかの作物だけが作られていました。そのため、緑島伝統の食の多くにはピーナッツとサツマイモが使われています。芡粿もその内の一つ。ピーナッツの粉、台湾バジル、もち米ペーストで作ります。カリッとした食感で、ピーナッツと台湾バジルがいい香りです。緑島でなければ食べられない伝統の美味です。
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海シイタケ(イカの皮)
周囲を海に囲まれた緑島に暮らしていれば、住民が古くから海の幸を主な食料として来たことは想像に難くありません。そのため新鮮な海産物をどのように調理すべきかが自然に分かるのです。海シイタケはシイタケではありません。ケンサキイカの尻尾かコウイカの皮で、台湾バジルといっしょに手早く炒めます。ご飯がすすむ一品です!
(写真提供-微笑魚工作室-曾靚)